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難しそうだけど、得意科目にしたいなぁ...
だから、民法の難易度を知り、効率的な勉強方法の把握が重要なんだな。
基礎をしっかり固めて問題演習に取り組めば、初学者でも合格点を死守することは決して不可能ではありません。
合格点を獲得する試験攻略のコツを知ることで、民法を得意科目にしましょう。
行政書士の民法の難易度
行政書士試験の民法の難易度は
- やや難
です。
行政書士の民法の出題範囲と傾向
あと、どんな出題のされ方をするのかな...
ただ、基本的な問題が出題されることが多いため、基礎知識を徹底的に身につければ解答できるようになっているんだな。
民法における
の詳細をご紹介していきます。
行政書士の民法の出題範囲
民法の出題範囲は
- 総則
- 物権
- 債権
- 親族
- 相続
の5つです。
行政書士試験の中で最もボリュームが多い部類の科目なんだな。
ポイント
- 全てを理解し暗記することは困難で、忙しい社会人ならば尚更
- 重要になる考え方は広く、浅く、何度も過去問などで勉強すること
行政書士の民法の出題傾向
民法の出題傾向は
- 物権
- 債権
- 民法の基本的なルールを定めた総則や不法行為(損害賠償)
の3つがよく問われます。
逆に、あまり出題されない論点は何があるのかな...
民法を勉強する上で知っておくべき考え方
民法の知識は行政法など他の科目にも関連しているため、学んだ知識を応用して別科目でも活用する意識を持つことが非常に重要です。
まずは債権の意味を知らない独勉クン向けに語句説明からしていくんだな。
勉強のコツ
債権を例に単語の意味を把握する重要性を解説
債権とは誰かに約束(契約)した内容(義務≒債務)を果たしてもらう権利で、簡単に言えば
- 約束を守ってもらう権利
です。
債権は物を直接的に支配できる(自分で自由に利用できる=自分で利益を享受できる)物権と異なり、「他人に何かをやってもらう」ことで、間接的に利益を確保します。
ポイント
- 法律のほとんどは公法である行政法と捉えることができ、権利(債権)・義務(債務)関係を規定している
行政法にも債権の考え方を当てはめてみると
つまり、他人に義務( ≒債務)を科し(下命し)、他者がその義務(≒債務)を果たすことで行政秩序の安定という利益の実現を図っていると考えられるから、債権の考え方を利用できるんだな。
具体例で解説
建築基準法違反による建物除去命令を例に解説
今回は行政法の建築基準法違反による建物の除却命令を
- 債権者を行政
- 債務者(=名宛人)を市民
と考えます。
除却命令とは、建物を取り除いてもらう(取り壊してもらう)権利
ポイント
- 行政(債権者)は市民(債務者)に対し、除却という義務(≒債務)を科し、市民(債務者)に建物を取り除いてもらうこと(≒債権)で、秩序安定の実現が可能¥
- すんなり市民(債務者)が建物を取り除いてくれないとき(義務を履行しないとき)においては、行政(債権者)は最後の手段として行政代執行法によって強制的に建物を取り除き、秩序安定の実現も可能
- さらに、行政代執行法によって強制的に建物を取り除くのに要した費用は、市民(債務者)に請求(≒債務)し、費用を払ってもらう(≒債権)権利を行政(債権者)は持っている
- これらのように、債権と債務の考え方は行政法のいたるところに当てはめられる<
行政書士の民法攻略のコツ
行政書士試験において、全体得点約4分の1を占める民法を攻略するには基礎知識の徹底が不可欠です。
過去問の出題は、一見すると問題文が長く、言い回しも分かりづらいため、重箱の隅をつつくような内容まで覚えないといけないと思いがちです。
しかし、実際には
の3つの基本知識の徹底さえできていれば合格点を確保できるように設計されています。
民法の条文理解の徹底
そして、条文を知らないとは得点ができない出題方法となっているんだな。
民法は条文そのものを理解(暗記)しておかないと、得点できません。
選択式問題だけでなく、短答記述問題においても条文もしくは判例の理解が問われます。
ポイント
- 選択式問題であれば、消去法で正答を導くことも不可能ではない
- 短答記述問題は自分で全て記述しなければならないため、うろ覚えの理解では正答にたどり着くことは不可能
平成29年度問46の過去問でチェック
問題・解答
不法行為による損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が、いつの時点から何年間行使しないときに消滅するかについて、民法が規定する2つの場合を、40字程度で記述しなさい。
【解答例】損害および加害者を知った時から3年間、または不法行為の時から20年間、行使しない時。
本問題は民法724条の
- 不法行為
の理解が問われています。
不法行為
- 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
- 不法行為の時から20年間行使しないとき
民法の条文あてはめによる思考力の強化
次に条文・判例を事例にあてはめて考える力をつけるの順番で取り組む必要があるのか...
民法で頻繁に出題される事例問題は条文・判例の理解を前提とした出題形式となっているため、事例問題を正答するには民法の条文あてはめによる思考力の強化が求められます。
事例問題は
- 事例
- 条文・判例
- 正誤判断
の流れで問題作成されているパターンがほとんどです。
ポイント
- パターンが固定化されているため、正誤判断から逆算しながら内容を理解できれば正答可能
平成29年度問30の過去問をチェック
問題・解答
Aは、甲不動産をその占有者Bから購入し引渡しを受けていたが、実は甲不動産はC所有の不動産であった。BおよびAの占有の態様および期間に関する次の場合のうち、民法の規定および判例に照らし、Aが、自己の占有、または自己の占有にBの占有を併せた占有を主張しても甲不動産を時効取得できないものはどれか。
- Bが善意で5年間、Aが善意無過失で10年間
- Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
- Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
- Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
- Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間
解答:③
解説
本問題は、
- 時効取得
- 占有
の理解が問われています。
じゃあ、時効取得(民法162条)と占有(民法187条)を確認してみるんだな。
時効取得(民法162条)
- 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
- 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
占有(民法187条)
- 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。
- 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。
次は事例にあてはめて考えてみるだったな...
Aの占有時の状態が善意無過失、善意有過失、悪意がしっかりできているかがポイントになるんだな。
選択肢1
Bが善意で5年間、Aが善意無過失で10年間
選択肢2
Bが悪意で18年間、Aが善意無過失で2年間
Aは善意無過失ですが、2年しか占有しておらず、時効取得のためにはBの占有期間を合算する必要があります。
選択肢3
Bが悪意で5年間、Aが善意無過失で5年間
Aは善意無過失ですが、5年しか占有しておらず、時効取得のためには、Bの占有期間を合算する必要があります。
Bは悪意で5年間占有していましたが、占有期間を合算する場合は、Bの瑕疵をも引き継ぐことになります。
選択肢4
Bが善意無過失で7年間、Aが悪意で3年間
Aは悪意ですが、5年間占有していました。時効取得のためには、Bの占有期間を合算する必要がありますが、Bは、善意無過失で5年間占有していました。
期間を合算する場合は、Bの「善意無過失で5年間」という状態を引き継ぎますので、時効取得に必要な期間は10年間となります。
選択肢5
Bが善意無過失で3年間その後悪意となり2年間、Aが善意無過失で3年間その後悪意となり3年間
Aが善意無過失で3年間、その後悪意となり3年間の6年間占有していました。
時効取得のためには、Bの占有期間を合算する必要がありますが、Bは善意無過失で3年間その後悪意となり2年間占有していました。
期間を合算するためには、Bの占有開始時の状態(=善意無過失)を引き継ぐがなければならず、必要な期間は10年となります。
民法の読解力の強化
民法を攻略するためには、条文理解の徹底と条文のあてはめによる思考力の強化に加えて、読解力の強化が必要となります。
ただし、難しいことが求められているわけではなく行政書士の試験における読解力とは、
- 内容を時系列に整理
できることです。
時系列整理が必要な理由
- 登場人物の行動の有無や時間(順番)によって、発生する権利が変わったり、そもそも権利が成立しなかったりするように問題が作成されているため
平成26年度問28の過去問をチェック
問題
Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
- AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。
- AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない。
- AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときは、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができない。
- AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があったときは、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる。
- Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことはできない。
解答:①
解説
本問題は
- 取消権
を問うています。
ポイント
- 読解力を強化し、文章からいつ、誰が、何を、どうしたを正しく整理すること
選択肢1を時系列に整理
AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。
選択肢1(上記)を時系列に整理すると
- BがAを脅迫
- AがBに売却
- Bに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過
- AがBの脅迫を理由に売買契約取消し?
となります。
民法では、取消の原因となった状態がなくなってから消滅時効(=取消ができなくなる)が進行するとされています。
AはBに対する畏怖の状態が10年続いていました。
この状態では、取消の原因となった状態=畏怖の状態がなくなったとは言えず、消滅時効が進行しません。
選択肢2を時系列に整理
AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない。
選択肢2(上記)を時系列に整理すると
- BがAを騙す
- AがBに売却
- Bが詐欺について善意無過失のCに転売
- AがBの詐欺を理由に売買契約取消し
- CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない?
となります。
詐欺による売買契約取消しでも、第三者がそれについて知らなかった場合は、「善意の第三者」として保護されます。
そして、この場合には、登記などの対抗要件は不要とされています。
選択肢3を時系列に整理
AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときは、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができない。
選択肢3(上記)を時系列に整理すると
- DがAを脅迫
- AがBに売却
- AがDの強迫を理由として本件売買契約取消し?
となります。
脅迫による売買契約取消しは、詐欺とは異なり、善意の第三者に対して対抗することができます。
これは、脅迫の場合はAには全く落ち度がないため、法律上の保護の要請が強いと解されるためです。
選択肢5を時系列に整理
Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことはできない。
選択肢5(上記)を時系列に整理すると
- Aは未成年者(制限行為能力者)
- そのことを告げずにBと売買契約
- Aは未成年者であることを理由に売買契約取消し?
となります。
判例では、単に制限行為能力者であることを告げなかっただけでは、「詐術」に該当しないとしているため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことは認められます。
ポイント
- 時系列に内容を整理して考ないと、正答を導けない
- 読解力の強化とはいつ、誰が、何を、どうしたを時系列で正しく整理すること
行政書士の民法攻略における注意点
民法は出題範囲が広く、覚えるべきことが行政書士試験で最も多い科目なため、1度に全てを理解・暗記するのではなく、徐々に覚えていく粘り強く学習が重要です。
民法攻略だけに限った話ではなりませんが、行政書士の試験対策をする上で時間対得点効果が高いかどうかを常に考えて勉強すべきです。
忙しい社会人で育児もしているなど限りある貴重な時間の中で行政書士に合格を目指すのであれば、合格というゴールに直結する勉強に取り組まなければりません。
そうでないと、2、3年とズルズルと勉強を続けなければならず、本来別の時間にあてることができた貴重な時間を費やすことになってしまいます。
司法書士レベルの民法の範囲まで手を広げない
民法は基礎概念の理解だけでも相当の労力を要します。初学者であればなおさらです。
また、司法書士試験レベルの知識は行政書士試験と完全に相関しているわけではないどころか、行政書士試験には不要な知識も沢山存在します。
行政書士と司法書士の互換性
- 登記や債券に関する知識は行政書士試験でも必要
- しかし、それを保全するための手続法は司法書士試験では必要だが、行政書士試験では不要な知識
そのため、司法書士試験レベルの勉強範囲まで手を広げても、さほど行政書士の合格には有利となりません。
あくまで民法で登場するキーワードの理解は行政書士のテキストに掲載されているレベルにとどめておくことが時間対得点効果を最大限高めることにつながります。
過去問にでてくる捨て問(激ムズ)は深追いしない
でも、際限なく勉強範囲が広がってしまうし、そんなことしなくても頻出論点の徹底理解ができれれば合格点は取れるんだな。
行政書士試験は規定の点数を得点できれば、必ず合格できる試験ですが、合格率を調整するためにあえてテキストや過去に出題のない一般の行政書士受験生では解答できない捨て問と呼ばれる難問・奇問が数問かならず毎年出題されます。
過去問などで演習をしていて難問・奇問に遭遇すると不安な気持ちになるのは真剣に勉強をしている証拠です。
しかし、捨て問を正答するために勉強範囲をむやみやたらに広げても時間帯得点効果はほぼないに等しいといって間違いありません。
行政書士試験の民法は基礎知識の組み合わせで概ねカバーできますし、合格点は間違いなく獲得できるので、基礎知識の徹底に時間を費やしましょう。
ポイント
- 捨て問は相手にせず、基礎知識で正解できる問題を絶対に落とさない意識が大切
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-
行政書士の独学合格に必要な過去問の使い方とは?合格者には共通する3つのテッパン法則
独勉クン行政書士の過去問を繰り返し解いて答えを覚えてしまったから、もう意味ない気がする... 答えを覚えてからが本当の勝負なんだ。 いかに、過去問の正しい使い方ができているかがポイントなんだな。アール ...
まとめ
だから、司法書士レベルの範囲まで手を広げない、過去問に出てくる捨て問(激ムズ)は深追いしないに注意しなら勉強すべきなんだな。
民法の攻略なくして合格はあり得ません。
そのためには、
- 条文理解の徹底
- 条文のあてはめによる思考力の強化
- 読解力の強化
の3つの習得を徹底的に行うことです。
民法は独特な考え方も多いですが、理解しやすい科目でもあるため、ぜひ得意科目にすることで行政書士の合格を手に入れましょう。